2013年07月31日

パイプラインも安全神話!?

東日本大震災に伴う東京電力・福島第一発電所の事故により原発の安全神話が脆くも崩れ去ったが、今度はガスパイプライン網の安全神話が生まれようとしている。原発の再稼働が難しいなか、政府は原発に代わる電源としても環境面と価格面から天然ガスシフトを強力に推進。石油やLPガスは天然ガスの攻勢に押されっ放しの状況にある。だが、天然ガスは独立した分散型電源ではない。とくに近年懸念され始めた首都直下型地震や南海トラフ大地震が仮に起こったとしたら、東日本大震災時のパイプラインの供給途絶時の混乱と比べ物にならないことぐらいは想像に難くない。阪神・淡路大震災では都市ガスの復旧には11週程度、新潟中越沖地震でも3週程度要しており、東日本大震災では10日程度かかった。防災・減災の視点も大事だが、災害発生時の国民の生活をいかに守っていくのか。偏らないエネルギーミックスが問われている昨今で、どうも片目を瞑って政策が進められているとしか思えない。

政権与党となった自民党は震災の教訓から災害に強い国土づくりを目指し、政務調査会の下に国土強靭総合調査会を新設した。年内に骨格となる中間とりまとめを実施し、2014年6月を目処に最終答申する方針である。災害の未然防止をはじめ、発生時の政治・経済・社会の持続可能性などを謳う。具体的な話はこれからだが、災害発生時のエネルギー安定供給の視点に対する話は今のところ聞こえてこない。同調査会では「首都直下地震対策特別措置法案」や「防災・減災等に資する国土強靭化基本法案」、「南海トラフ地震対策特措法案」があり、今通常国会では成立できなかったため、今秋に成立を目指す。特措法は防災対策推進地域を指定するほか、避難施設の整備や防災訓練などの推進計画を策定するというもの。政府が天然ガスシフトを強力に推進していることを考えれば、災害に強い石油や、軒下在庫としてすぐにでも活用できたLPガスを都市機能の一部に取り入れるという視点が欠落してもおかしくない。

どうもパイプラインが災害に強いかのように受け止められている背景には、東日本大震災時に石油資源開発の所有するパイプライン本体に被害がなかったところに起因しているように思えてならない。東京ガスによれば、高圧・中圧ガス導管は阪神・淡路大震災や東日本大震災クラスの大地震にも十分耐えられるよう設計しており、実際に阪神・淡路大震災時にも中圧導管にガス漏れが発生しなかった。東日本大震災で供給途絶したのは津波による輸入基地の被災と一部耐震化が進んでいない低圧管で被害があったからとしている。津波対策と耐震化していればパイプライン網は大丈夫と言いたいようなのだが、原発でも「想定外」と言い訳されたことを考えれば、疑問に残るところだ。

行政がここまで天然ガスシフトを強力に進める背景には、石油の資源枯渇や価格高騰の懸念にある。日本は原油輸入を中東に8割近く依存しており、今後の中国やインドなどアジアの需要急増により中東産原油が逼迫し、一層の高騰が懸念されている。一方、天然ガス資源は世界に偏在しており、現在のところ石油より安価に調達できる。また、石油にとってもエネルギー調達の多様化や分散化から調達リスクの軽減にも繋がるというのが言い分であろう。政府は産業分野や民間でも国内整備の遅れている幹線パイプライン網に梃入れし、海外との接続も視野に入れて一大幹線網を築きたい節も見受けられる。残念ながらシェールガス・オイルの動向では日本にどのような影響を与えるのか、政府はまだまだ判断しかねているようだ。だが、そのことと大規模災害の発生時に国民の命を守ることは問題の次元が違う。絶対にエネルギー供給が途絶してはいけない病院や避難所などに、安定供給するという視点を忘れてもらっては困る。緊急時に困らないよう、平時から安定供給できる体制を整えなければ、震災の教訓とは一体何だったのであろうかと将来被災した時に振り返ったところで取り返しはつかない。





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posted by 鈴木零号 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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