2009年03月12日

非化石・化石利用法案の中身

経済産業省が3月10日にまとめ、11日に閣議決定された「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案」が今国会で成立しようとしている。残念ながら大手新聞社で同法案を報じたのは、日刊工業新聞(3月4日にネット配信)しかないと思われる。その詳細を読み解いた記事は、おそらく私が初めてであろう。以降同法案の意味を損なわい省略形として「非化石・化石利用法案」と勝手に命名し、解剖することにする。
 
脱化石を鮮明にした狙いは
極言すれば同法案は「原子力政策の推進」である。法案名から受ける印象は、「エネルギー供給事業者は非化石エネルギーを利用しつつ、化石エネルギーも有効活用しよう」とどこか尤もらしい。同法案と一緒に提出される「石油代替エネルギーの開発及び導入促進に関する法律等の一部を改正する法律案」(代エネ法改正案)も背景としての理由は同じなので一緒に読み込んでみた。
経済産業省は、両案を提出する背景として、資源ナショナリズムの台頭や中長期的なエネルギー需給の根本原因の解消を理由に挙げている。日本の一次エネルギー供給に対し、化石燃料全体の占める割合は8割以上に及ぶ。そのほとんどを日本は輸入に頼っており、供給面、価格面で資源国に翻弄されてきた経緯がある。中東産原油は欧州向けよりアジア向けの方が割高に設定されているし、米国がイランを悪の枢軸国として決め付けたために、世界各国から日本に対しての圧力などにより、イラン・アザデガン大型原油開発も70%の権益が10%へ減った。ロシアはサハリン1・2プロジェクトともに、政府系ガス大手のガスプロムに主導権を握らせるべく、政治的な圧力をかけている。実際に契約当初の権益を減らされ、サハリン1のガス価格交渉で苦境に立たされている。太平洋パイプライン敷設をめぐる動きでも、日本は手玉に取られてきた。国家としてまともな外交のできない日本は苦渋を舐めさせられっぱなしだ。色々挙げればキリがないが、このような経緯もあって、長年の悲願であった原子力政策を日本が推し進めるには、今のタイミングが絶好なのであろう。
これまでオイルショックの経験により「石油代替エネルギー」に注力してきた日本が、原油やLPガス、天然ガス、石炭などの化石エネルギーを一括りとし、脱化石政策へ転じたこと意味するものである。従来の「代エネ法」は「非化石促進法」とその意味合いが変化した。

非化石・化石利用法案は国家誘導策
同法案の対象となるのは、電力、石油、ガス会社といったエネルギー供給事業者である。これらの事業者が講ずべき措置は、経済産業大臣により「基本方針」が決められる。電力会社は太陽光発電による固定買取制度(FIT)が義務付けられる一方、2020年までに太陽光発電や原子力発電などの非化石エネルギーを電源構成として50%以上へ拡大するというものだ。石油やガス会社はバイオ燃料やバイオガスの利用が義務化される。
一定規模以上の事業者はそれぞれ計画を作成し、提出しなければならない。また、経済産業大臣が定める「判断基準」に照らされ、著しく不十分な場合には同大臣は勧告・命令できる。また、罰則規定も設け、勧告措置の命令に従わなければ100万円以下、計画提出や報告を怠れば50万円以下の罰金に処するとしている。さらに、設備、帳簿、書類、その他の物件へ立入検査もできる。ある意味では、国の思い切った政策と言えるし、逆に横暴過ぎるとも言えよう。第18条「権限の委譲」では経済産業局長に委任することができるというから、経済産業大臣ではなく、実質経済産業局長が役割を担うことになるのだろう。非化石エネルギー源の利用とは、これらのことを意味している。
一方、「化石エネルギー原料の有効な利用」という耳障りの良い言葉は何を意味しているのか。上述した政策によって、その分の化石エネルギーは温存される。「輸入量が減った化石エネルギーを効率よく有効に使え」って意味合いが大きいだろう。経済産業省資料には「技術開発の促進の必要性」として例を挙げている。
1.水素社会構築に向けた、水素の製造や貯蔵、燃料電池に関する技術開発
2.メタンハイドレートやオイルサンドといった非在来型資源に関する技術開発
3.石油残渣を効率的に分解するための技術開発
4.ガス化複合発電(IGCC)に関する技術開発
5.木質等、セルロース系バイオマスの活用に関する技術開発
これらである。
法律によって、各社の得意とする産業分野に変更を迫り、さらに技術開発をちゃんとやれという内容であるならば、腹を立てぬ人はいないだろう。
同法案は国会で成立すれば2年以内に施行され、3年後に見直しする流れ。自民党であろうが、民主党であろうが、いずれの政権でも成立は必至だと思われる。

代エネ法改正案の真意は石油叩き
非化石・化石利用法案は、電力、ガス、石油会社にとってそれぞれ厳しいものであったが、代エネ法改正案の中身はどう変わったのか。実際は、脱化石とは性格が異なることに注意が必要であろう。
今回の改正案により、代エネ法は「非化石エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」へ生まれ変わる。私は略称を「非化石促進法」と勝手に命名することとした。まずは、同法案で支援対象となってきた「石油代替エネルギー」が文字通りに「化石エネルギー」に変わる。中小企業信用保険法では、「非化石エネルギーを使用する施設の設置の費用」と保険対象が変更になった。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の関連業務も「非化石エネルギー」以外のものを削除する訳だ。ところが、意味としてはこの理屈は分かるけれども、NEDO法で削除された天然ガスと石炭は、本則の業務に追加されることになる。ということは、「石油とLPガスの利用の高度化に係る技術開発」はしませんって意味でしかない。どういう意味で、石油は駄目で、なぜ石炭と天然ガスは良いのか定かではない。要は、石油代替政策の延長線上で石油業界だけに配慮をしなかったということなのだろう。
経済産業省は工場や事業場で導入すべき指針を定め、公表することとしている。
具体例として
1.事業者と地方公共団体が連携して、大規模太陽光発電(メガソーラー)の建設を促進すること
2.道路、港湾、鉄道、空港などの公的施設で、太陽光発電等新エネルギーの導入をより一層促進すること
を挙げている。
非化石促進法案も国会成立後の2年以内に施行。こちらは5年後に状況を検討するとのこと。

やっぱり国は原子力
世界各国の原発回帰、太陽光発電のシェア競争が潮流化しつつあり、経済産業省もこれにならったのであろう。とくに、原発政策は国の悲願でもあった。これら法案の要点は、電力会社に対して「原発を推進するから太陽光発電の固定買取制度を認めろ」というものだ。2020年までに太陽光と原発などで電源構成を50%以上にするということは、原発を推進するという意味がほとんどを占める。
温暖化ガス削減をめぐる世界的な枠組みの中で、日本だけが厳しい削減目標を設定されるなど苦渋を舐めさせられている。ところが、原発を推進できれば、このほかにも様々な問題を解決できる。日本は原発技術でも世界最高水準を現状で誇っている訳だから、その想いは一際強い。
だが、日本国民は電力会社による虚偽や事故などによって原発のリスク面をしっかりと味わってきたので、そう簡単に理解はされない。また、MOX燃料にしろ、廃炉、高放射性廃棄物の最終処理、最終埋立地などなどにしろ、原発の課題も多い。世界ですら原発の最終リスクまで考えて行動していないのが現状だと言えよう。
私の持論では、経済性の高いものこそトータルで一番環境に優しい。バイオ燃料などは愚の骨頂であるし、トータルコストをカウントしない原発などは実態がまだ見えていない分だけ、これから様々な問題が間違いなく浮き彫りになってくる。
グリーンニューディールによって雇用を創出することは大事だ。だが、様々な産業が発展・成長・継続できる環境こそ、最も健全な状態である。そのために、税金でちょっぴり支援したり、法律面で優遇策を講じてあげればよい。無理な公的支援で経済全体のパイが小さくなるというのは、経済学の初歩だ。政府による強引な誘導は、金に依存しなければ存続できない、歪な産業構造を生むだけであり、その逆に我々の予期しない重大な問題が生じてくる。日本の議論は素晴らしいものがあるのに、結論はいつも安直な答えに行き着く。結局、最初からシナリオが描かれているのだから当然と言えば当然なのかもしれない。

出所は
http://www.meti.go.jp/press/20090310001/20090310001.html





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posted by 鈴木零号 at 18:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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